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私たちWOOD HOUSE DESIGNは、
長野県上田市を中心に活動するちいさなデザイン集団です。
「人とモノ、人と人を繋げるデザインを」

第6回 T-バックはメディアである

ずいぶんと寄り道をしてしまったが、忘れないでいただきたい。私はT-バックのことについて書こうとしている。決してwikipediaのことなんか書くつもりはなかった。T-バックについて語るべきことは山ほどあるんだ。何がwikipediaだ。あまり悠長にしていられない。語るべきことがあるなら、今すぐにでも語ろうじゃないか。私はこれまで何をしていたんだ。

 

人知れず私は焦っているのだった。なぜなら、あの法案が衆議院で可決されてしまったからだ。

 

この国では、秘密を知ることはおろか、秘密を語ることもできなくなって、やがて何も語ることができなくなってしまうだろう。そしてその頃には、特定秘密の項目に「T-バック」が入っているはずだ。そうなると、T-バックについての秘密を暴くようなコラムを書いた日には、牢獄の中で一生を過ごすか、指名手配犯「T-2」として追手から一生逃れる日々を過ごすか、いずれかの人生を強いられるわけである。そんな人生はご免だ。ていうか、T-バックが特定秘密の国ってのは、一体どんな国なんだ。さすがの私も本当に日本がそうなるとは思っていないが、しかし何が起こるかわからないのがこの世の中というものである。あながち笑い話では済まされないかもしれない。漫画「AKIRA」で描かれた「ネオ東京」のような2020年が待っているかもしれないのである。そしてその頃には、例えば「ネオ日本」などというように「日本」という国名さえ変わっているかもしれない。

 

「東朝鮮」

 

こうなると、まさしく「秘密のベールに包まれた謎の国家」と言ってもよさそうな雰囲気を醸し出すから不思議だ。

 

「本日」

 

Made in TODAY などと意味ありげなことを言いたいのだろうか。しかし「本日、本日に帰国」では何がなんだかわからないのだった。

 

「アベジャパン」

 

これなら本日のほうがましだ。

 

「アベチャン」

 

…だめだ。話をT-バックに戻そう。国名がアベチャンになってしまわないうちにT-バックについて語りつくさなければならないのだった。先に述べたとおり、2020年にはT-バックが特定秘密に指定されるはずだ。ということはつまり、T-バックとは、あらかじめ何らかの秘密をはらんだ存在であるということである。「T-バック」「秘密」と聞いてすぐに思い浮かぶのは、「T-バックをはいていることを秘密にしている」というセンテンスだろう。人はT-バックのことを秘密にしがちである。というより,下着の話というのは、ふつうあまりおおっぴらにするものではない。なぜなら、下着とは、常に肌に密着するものだからだ。さらに踏み込んで言うと、下着とは、個人の身体的特徴や体内環境などの個人情報を含む記録媒体のようなものである。この前提に立てば、T-バックの秘密性がいかに高いかがより鮮明に感じられるのではないだろうか。T-バックは、下着の中でもとりわけ肌への密着度が高い。なにせ、「T」の縦線が尻の線にすっぽり当てがわれており、肛門に接しているのである。

 

T-バックとはすなわち、肛門の情報を記録するメディアである。これを特定秘密と言わずして何を特定秘密と言うのか、国際政治や法律に疎い私には皆目分からないのである。

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